第5回 次世代省エネ基準:こんなに違う、昔と今
4-2 一次エネルギーとは
ところで、一次エネルギーとは何でしょうか?
家庭で用いられるエネルギーは、一般に、電気や都市ガス、プロパンガス、灯油などです。これらのエネルギーを二次エネルギーと呼びます。二次エネルギーは、石油や石炭、天然ガスなどの天然資源から製造されるのはご存じでしょう。このような二次エネルギーを作り出す自然由来のエネルギーを一次エネルギーと呼ぶのです。
つまり、一次エネルギーで評価するということは、電気やガス、灯油など異なる二次エネルギーを同じ天然資源を示す一次エネルギーで評価し、CO2の削減に努めるという事です。
4-3 一次エネルギー消費量の試算
「住宅事業建築主の判断の基準」では、一次エネルギー消費量を計算する方法として、以下の二つのツールが準備されています。
1. 算定用シート
2. 算定用プログラム
ここでは、算定用ツールについて簡単にご紹介します。
算定用シートは地域区分ごとに準備されています。その地域区分ですが、「建築主の判断基準」では6地域でしたが、「住宅事業建築主の判断の基準」では、I地域がIa地域とIb地域に、IV地域はIVa地域とIVb地域に細分化され、計8地域が定義されています。算定用シートは、この8地域の中から選択します。
(1) 照明設備の試算例
例えば、東京や大阪などの大都市部を含むWb地域の場合で、表5のパナソニックの省エネ照明設備を採用したとします。すると、表6のハッチ部が、この照明設備による年間の一次エネルギー消費量になります。
【試算例】
パナソニック省エネ照明の一次エネルギー消費量=2.9+2.3+1.5=6.7[GJ/年]
白熱灯の一次エネルギー消費量=4.3+3.4+4=11.7[GJ/年]
蛍光灯の一次エネルギー消費量=3.6+3.1+1.6=8.3[GJ/年]
すなわち、パナソニックの省エネ照明は、白熱灯より43%、普通の蛍光灯より20%も省エネであることが分かります。
【表 5 採用する設備】
照明設備を 設置する場所 |
照明設備 | 特 長 |
LDK | パナソニック省エネ照明 オートエコ調光付ツインPa |
センサーが部屋の明るさを検知して、自動で調光するあかりです。 |
LDK以外の 全居室 |
||
非居室 (廊下、階段等) |
パナソニック省エネ照明 FreePa |
人が近づくと自動点灯、いなくなると自動消灯するセンサーのあかりです。 |
【表 6 算定シート(IVb地域):(E)照明設備の一次エネルギー消費量】
照明設備 | 一次エネルギー消費量 (単位 ギガジュール毎年) |
|
(e-1) LDK | 新築時に設備が設置されていない場合 | 4.3 |
白熱灯を使用している | 4.3 | |
白熱灯を使用していない | 3.6 | |
白熱灯を使用せずかつ調光を採用している | 2.9 | |
(e-2)LDK 以外の居室 |
新築時に設備が設置されていない場合 | 3.3 |
白熱灯を使用している | 3.3 | |
白熱灯を使用していない | 3.1 | |
白熱灯を使用せずかつLDK以外のすべての居室で調光を採用している | 2.3 | |
(e-3) 非居室 |
新築時に設備が設置されていない場合 | 4 |
白熱灯を使用している | 4 | |
白熱灯を使用していない | 1.6 | |
白熱灯を使用せずかつ人感センサーまたは照度センサーを採用している | 1.5 |
(2)一次エネルギーの評価は家全体
実際の一次エネルギー消費量の評価は、家全体で行います。図 5に示した「暖冷房設備」「換気設備」「照明設備」「給湯設備」が対象です。このうち、「暖冷房設備」と「換気設備」は「断熱性能」によって一次エネルギー消費量が増減しますので、断熱強化も必要な措置です。更に「太陽光発電設備等のエネルギー利用効率化設備による一次エネルギー消費量の削減量」も評価に加えることができます。
先に紹介した照明設備は一つの要素に過ぎず、照明だけで基準をクリアすることはできません。他の設備も同じように省エネ設備を採用し且つ断熱性能を上げて、家全体の一次エネルギー消費量の削減を図る必要があります。