JFEロックファイバー株式会社

第2回 断熱設計の基本:断熱施工の奥深さ

第2回 断熱設計の基本:断熱施工の奥深さ

2. 断熱工法の概要

2-1充填断熱工法と外張断熱工法

充填断熱工法はわが国の在来木造住宅で最も広く用いられている断熱工法です。一方、外張断熱工法は比較的新しい断熱工法で、大手住宅メーカーのテレビCMなどで知られるようになりました。このような広告によって外張断熱工法の方が優れているように思われる方も少なくありませんが、決してそうではありません。充填断熱工法も外張断熱工法も、それぞれが優れた点を持っています。

表1に充填断熱工法と外張断熱工法の特徴を整理しましたので参考にして下さい。

図 6 充填断熱工法と外張断熱工法

図 6 充填断熱工法と外張断熱工法

【表 1 充填断熱工法と外張り断熱工法の主な特徴】

  充填断熱工法 外張断熱工法
概要 壁内の柱・間柱、梁など軸組み間の空隙に断熱材を施工する工法です。 寒冷地などで高い断熱性能が必要な場合は、外張断熱工法を併用する場合もあります。 柱・間柱、梁など軸組みの外側に断熱材を施工する工法です。
断熱材料 主に、繊維系断熱材*1が用いられますが、発泡プラスチック系断熱材を用いることもできます。 主に、ボード状の発泡プラスチック系断熱材*2が用いられますが、ボード状の繊維系断熱材を用いることもあります。

  *1 繊維系断熱材
繊維状の断熱材で軽い。フェルト状をした形状の製品が一般的ですが、密度が高く断熱性能の高いボード状のものもあります。 フェルト状、ボード状いずれも空隙内への施工が行いやすいのが特徴です。 水蒸気、空気を通しやすいので、結露防止対策、気密化のためには、別途防湿気密フィルムなどの施工が必要です。
*2 発泡プラスチック系断熱材
プラスチックを発泡させた材料で、材料内の気泡により断熱性能が発揮されます。原材料、気泡の形成方法により多種ありますが、いずれも繊維系断熱材よりも断熱性能が高く、水蒸気、空気を通しにくいのが特徴です。成型品であるため、空隙への施工より、張り付けによる施工に向いています。
断熱材の厚さ決定に際しての留意 柱・間柱、梁などが断熱されない状態となりますので、その部分の熱ロスを考慮して断熱材厚さを厚くする必要があります。(外張断熱よりも少し厚めの断熱材が必要です) 柱・間柱、梁などの部分も断熱されているため、同じ性能の断熱材を用いた場合、充填断熱より薄い断熱厚さで必要な断熱性能が得られます。
気密化の方法 柱・間柱、梁などが断熱されない状態となりますので、その部分の熱ロスを考慮して断熱材厚さを厚くする必要があります。(外張断熱よりも少し厚めの断熱材が必要です) 柱・間柱、梁などの部分も断熱されているため、同じ性能の断熱材を用いた場合、充填断熱より薄い断熱厚さで必要な断熱性能が得られます。
内部結露対策 繊維系断熱材は水蒸気を通しやすいため、断熱材の室内側に水蒸気が侵入しないように防水層として防湿気密フィルムの施工が必要である。 同時に、断熱材の外側には、水蒸気が断熱材内部に滞留しないように外気に排出しやすくするための通気層、透湿防水シートの施工が必要である。 発泡プラスチックを用いる場合は、断熱材が水蒸気を通しにくいため、防湿気密フィルムの施工は不要です。ただし、外気側は断熱材と外装材の間に水蒸気が滞留しないように通気層が必要です。
施工上の留意事項 空隙に断熱材を充填(はめこむ)工法であるため、柱等との間に隙間が生じないように留意する必要があります。 また、施工後、断熱材が自重等により垂れ下がり、落下などしないように固定することも重要です。 断熱材は、柱等に釘、ビスなどで留めつけます。 断熱材の間、あるいは断熱材の外側に通気層を形成するとともに外装材の下地となる胴縁を釘等で留めつける為、外装材の重量を考慮し、釘等の選定、留めつけ間隔などに留意が必要です。
  断熱材の保管時や施工時の水濡れに注意が必要です。(湿気を含むと断熱性能が劣化します) 日射に長期間曝さないように注意して下さい(日射によって断熱材が劣化します)。
  壁内で断熱するため、壁が断熱により厚くなることがありません。 外側に壁厚が増します。狭小敷地では、注意が必要です。
  断熱壁において、電気配線、コンセント・スイッチ類を施工する際は、断熱欠損、防湿層・気密層に穴を開けないように注意が必要です。 壁内が空洞のままであるため、配線等に対する注意は不要です。
  サッシ固定枠は、通常通りで構いません。 外側に壁厚が増すため、サッシ固定枠を壁外側に別途設けなければなりません。
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