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第2回 断熱設計の基本:断熱施工の奥深さ

第2回 断熱設計の基本:断熱施工の奥深さ

1.断熱層の連続が大事

断熱設計といいますと、とかく断熱材の種類や厚さが大事と思われますが、
最も大事な事は『断熱層の連続性』です。
断熱層は適切な断熱性能を有する壁や天井・屋根・床などの部位の事です。
したがって、断熱層は断熱だけでなく、気密や調湿性能も有しています。
この断熱層を、断熱の対象となる空間を切れ目無く覆いつくす事が断熱設計の基本であり、
これを『断熱層の連続』と言います。


1-1連続した断熱層で対象となる空間を全て覆う

図 1 断熱する空間と断熱しない空間の区分の例
図 1 断熱する空間と断熱しない空間の区分の例
断熱の対象となる空間を覆う全ての断熱層、すなわち壁や天井・屋根・床などの部位(断熱層)を、「断熱対象部位」と言います。断熱対象部位は、屋外と断熱空間(室内)を熱的に区分する意味で「熱的境界」とも言います。
したがって、断熱設計の第1ステップは、適切な断熱性能を必要とする室内空間と、それを必要としない空間を区分し、断熱対象部位(熱的境界)で明確に区分することです。

一般に、居間、寝室などの居室のほか、廊下、便所、浴室などの屋内の空間全てが熱的境界で断熱空間として区分します。また、1階と2階の間の天井裏も断熱空間とします。そのほか、屋根断熱における小屋裏、基礎断熱における床下などのように断熱工法によって断熱空間として扱う場合もあります。

図1では、屋外扱いとした方が都合がいい車庫を熱的境界の外気側空間としています。



1-2断熱対象部位の取り合い部で断熱欠損、隙間が生じないようにする

断熱層の連続において重要なポイントは、断熱対象部位の取り合い部です。木造、特に在来軸組み構法では、柱や梁施工のあとに床や天井が施工されるため、壁(外壁、間仕切り壁)と床、壁と天井の取り合い部において断熱欠損や隙間が生じやすい構造となっています。断熱欠損や隙間が生じると、隙間風の侵入や結露の原因となりますので特に注意が必要です。

図2は断熱欠損が生じている悪い例を図示したものです。円内のような断熱欠損や隙間が生じないように施工することが必要です。

図 2 在来軸組み構法における取り合い部の断熱欠損、隙間の例 クリック クリック クリック クリック クリック クリック クリック クリック
図 2 在来軸組み構法における取り合い部の断熱欠損、隙間の例

また、図3は間仕切り壁と床、間仕切り壁と天井の断熱施工の悪い例と良い例を示したものです。悪い例では、間仕切り壁の上下端が床下空間と小屋裏空間に開放されていますので、床下から小屋裏に向かって床下の冷気が間仕切り壁内部を流れることになります。
また、床と天井の断熱層が連続していないため、この部分からの熱損失が大きくなります。一方、良い例では、間仕切り壁の上下端の“間仕切壁受け材”と断熱材の施工によって、壁内気流防止と断熱層の連続性を確保しています。

図 3 間仕切り壁と床、間仕切り壁と天井の取り合い部の断熱施工
図 3 間仕切り壁と床、間仕切り壁と天井の取り合い部の断熱施工