![第6回 断熱工法の比較:充填断熱 VS 外張り断熱…どっち?](img/h2.gif)
第6回 断熱工法の比較:充填断熱 VS 外張り断熱…どっち?
3-2 断熱することで壁の内部で結露発生?
住宅においても壁等の表面や内部で同様のことがおこります。壁等の室内側表面での結露(表面結露と称します)は、断熱を強化することで防ぐことができます。しかし、壁等の内部で生じる結露(内部結露と称します)は、意外にも、断熱をすることで結露発生の危険性が生じることもあるのです。何とも理解しがたい現象ですが、皆様の住宅計画をサポートするための大事な知識ですので説明しておきます。
充填断熱と外張断熱において、防露策(内部結露を生じさせない対策)を何もしていない木造の壁で結露発生の原因を確認します。
![図 7 結露発生の原因と結露防止策](img/pic09_01.gif)
![透湿抵抗 熱抵抗 水蒸気圧分布 温度分布](img/pic09_02.gif)
![温度分布と露点温度](img/pic09_03.gif)
![断熱材の低湿度側(外気側)の透湿抵抗値が大きい。室内からの湿流がその部分でせき止められているため、断熱材外気側の水蒸気量が多い。](img/pic09_04.gif)
![断熱材の熱抵抗により、断熱材の両サイドで大きな温度差が生じる。そのため、断熱材外気側の温度は外気温に近い低温となる。](img/pic09_05.gif)
![柱、土台のある壁内が結露域となる。断熱性能、耐久性に大きな悪影響となる。](img/pic09_06.gif)
![外装、断熱材境界面が結露域となる。躯体への直接的な悪影響は小さいが、外装材および取付下地への悪影響がある。](img/pic09_07.gif)
図 7 結露発生の原因と結露防止策
断熱化すると断熱材の外気側で結露が発生します。なぜかというと原因は2つ。1つは断熱材の外側は温度が低いこと。もう1つは断熱材の外気側にある材料、つまり、外装材や塗装などの水蒸気せき止め効果が高いために水蒸気量が多くなってしまうことです。
原因の一つである断熱材の外側の温度が低いことに関しては、断熱化している以上、やむを得ないでしょう。
もう一方の原因「断熱材の外気側の水蒸気量」を少なくするためにできることは、断熱材の外気側で水蒸気をせき止めないことと、壁内への水蒸気の侵入をできるだけ少なくすることの2つです。
断熱材の外気側で水蒸気をせき止めないためには「断熱材の外気側に通気層を設ける」、壁内への水蒸気の侵入を少なくするためには「断熱材の室内側に防湿層をもうける」、ことが必要です。
3-3 防露のための基本的層構成
充填断熱と外張断熱の外壁ではそれぞれどのような層構成にしたらよいのでしょう。代表例をみていきます。
■ 充填断熱工法(外壁)
![図 8 充填断熱工法(外壁)の層構成の例](img/pic10.gif)
図 8 充填断熱工法(外壁)の層構成の例
注 意 点
- ■ 防湿層の設置
- 防湿フイルムは隙間なく完全に施工すること
- ■ 通気層の設置
- 通気層は必ず外気に開放されていること
- 繊維系断熱材の膨らみにより通気層を塞がないこと
- ■ 防水紙には透湿防水シートを用いること
- ※ 防湿層、通気層ともに施工不備があった場合は結露の危険性が生じます
■ 外張断熱工法(外壁)
![図 9 外張断熱工法(外壁)の層構成の例](img/pic11.gif)
図 9 外張断熱工法(外壁)の層構成の例
注 意 点
- ■ 通気層の設置
- 通気層は必ず外気に開放されていること
- ■ 繊維系断熱材の場合
- 防湿層、透湿防水シートの設置
- ■ プラスチック系断熱材の場合
- 断熱材は突付け部の隙間が生じない工夫をすること
- ※ 出典:建築知識1999年4月号