JFEロックファイバー株式会社

第10回 高断熱住宅の暖房 断熱で変わる暖房方法

第8回 取り合い部の設計、施工 ここが大事“取り合い部”

「皆様のご家庭では、どのような暖房で冬をお過ごしですか?」

このようなアンケートをすると様々な答えが返ってくるのがわが国の暖房の特徴です。本来、建築や暖房はその地域を代表する文化の一つです。日本の建築文化というと、古都市に現存する寺社や武家屋敷、古民家に代表される伝統的木造建築です。これらの建築は木や土や紙などの自然の素材で構成され、通気性、開放性に優れた機能美を有し、長い年月を重ねてその伝統美を洗練させてきました。この機能美の背景には高温多湿なわが国の気候風土があり、蒸し暑い夏から人と建物を守ることを優先してきた証です。それ故、このような伝統的建築物では、部屋全体の空気の温度を上げることが難しく、 囲炉裏や火鉢などの高い温度の熱源から放射熱で暖を取る方が効率が良く、快適だったのでしょう。一方、私達の現在の住まいは日本の伝統的建築とは全くかけ離れたものです。暖房は当たり前となったのですが、これも高度経済成長期辺りからです。わが国の住宅も暖房も、まだまだ発展途上にあると言えるでしょう。近年の住宅の高断熱・高気密化は著しいものです。住む人の安全と健康、快適を満たし、更に地球環境に配慮しつつ、この変化に適した暖房を再考しなければならない時に来ています。

今回は、高断熱住宅に適した暖房について考えてみましょう。

1. 暖房設備のあれこれ

1-1 暖房方式

図1は主な暖房機器を暖房方式(強制対流式、自然対流・放射式)、熱源種(ヒートポンプ型、電熱型、灯油・ガス等を用いた燃焼型)で分類したものです。
市場には多くの種類の暖房機器が流通しており、消費者の皆様はこれらの暖房機器から、経済性や快適性、安全性、個人の嗜好に合わせて自分が使う暖房機器が選択されています。

図 1 暖房設備の分類

図 1 暖房設備の分類(出典:電化マニュアル)

1-2 暖房の実情

温水式やビルトインエアコン以外のほとんどの暖房機器は、居住者の皆様ご自身が購入されて使用されます。その結果、非常に様々な機器が暖房として用いられているのが実情です。

図2は、リビングルームで通常用いる暖房機器が1台の場合の暖房機器の使用率のデータです。このデータは、東京電力が2006年1月に行ったインターネット調査の結果です。この調査は、女性を対象とし全国で3981の回答を得たものです。したがって、3981の回答のうち1175の回答で、すなわち約3割の回答者が、リビングの暖房は1台の暖房機器で行っていることがわかります。(逆に7割の回答者は、リビングの暖房を2台以上の機器で暖房している事になります。)

図 2 リビングの暖房機が1台の場合の暖房機器の調査結果(東京電力調べ)

図 2 リビングの暖房機が1台の場合の暖房機器の調査結果(東京電力調べ)

全国的に見れば、エアコンとストーブ(灯油式)がそれぞれ約2割を占めています。次に多いのが開放型ファンヒーター(灯油式)で、その次が開放型ファンヒーター(ガス式)です。灯油式とガス式のファンヒーターの合計は約3割を占めますので、ファンヒーターが最も普及している暖房と言えます。

ただし、暖房は地域によって異なる傾向があります。図2に示すI、II、III、IV、Vのローマ数字は、省エネ区分地域で、数字が大きくなるほど暖かい地域になります。Iは北海道等の寒冷地、IVは東京や大阪、名古屋などの大都市を含む温暖地、V地域は鹿児島県や宮崎県などの蒸暑地です(沖縄はVI地域に区分され、図 2には含んでいません)。なお、IV地域は範囲が広いので、IV地域の中でも比較的寒冷な(北関東のような)地域はIV−A、それ以外をIV−B地域と細分化しています。

■エアコン暖房がよく使われているIV−B地域とV地域

エアコンを暖房に良く用いるのはIV−B地域とV地域です。これらの地域では約3割がエアコンで暖房しています。しかし、その他の寒冷な地域では1割もありません。気温が低いとエアコンの効きが悪いと言われるのが原因でしょう。ただし現在は、III地域やIV−A地域のような寒冷な地域でも十分に能力を発揮できる寒冷地エアコンも販売されています。

■寒冷地でよく使われるストーブやファンヒーター

ストーブはI地域とII地域、ファンヒーターはIII地域やIV−A地域で人気があります。また、III地域より寒冷な地域では、給排気式ファンヒーター(灯油式)の占める割合が顕著になっています。

このように、暖房機器の使用状況は地域によって異なっているのが実情です。

■ エアコン暖房が多いのはIV地域とV地域の温暖地
■ 開放型ファンヒーターが多いのはIII地域と比較的寒冷なIV地域
■ 給排気式ファンヒーターが多いのはI地域、II地域の寒冷地