JFEロックファイバー株式会社

第10回 高断熱住宅の暖房 断熱で変わる暖房方法

第8回 取り合い部の設計、施工 ここが大事“取り合い部”

2. 高断熱住宅に適した暖房

2-1 高断熱化の目的を振り返ると…

これまで断熱工法について色々と勉強してきましたが、ここで、高断熱な住宅が必要な理由を振り返ってみましょう。

第1回「断熱の役割:我が家と財布と地球を救う!」では、その役割として“社会的背景”と“断熱の効果”の二つに大別して説明しています。“社会的背景”では暖冷房エネルギーの削減が地球温暖化防止に不可欠であることをお伝えしました。また、“断熱の効果”では、快適さと安全性の実現、経済性について説明しています。

また、第6回「断熱工法の比較:充填VS外張り・・・どっち?」第8回「取り合い部の設計、施工:ここが大事“取り合い部”」では、壁体内部での結露発生やその防止策についてご説明しました。断熱化は結露を防止することで、大切なお住まいを長持ちさせることにも効果的なのです。

せっかくの高断熱住宅ですから、その特長を生かせる暖房を選択し、正しく使うことが望まれます。

2-2 高断熱化で変わる暖房

  • ① 環境に優しい省エネルギー性
    → “エアコン”がNo.1!
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  • ② 暖冷房費を節約する経済性
    → “エアコン”がNo.1!
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  • ③ 温度むらの少ない快適性
    → “床暖房”or“エアコン”
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  • ④ 温度ショックが少ない健康性
    → “中央方式(セントラル方式)”
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  • ⑤ 結露対策による耐久性
    → “×開放式ファンヒーター”“×ストーブ”
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① 環境に優しい省エネルギー性

①の特徴を生かせる暖房は、“エアコン”です。「省エネ性」で実験結果を紹介したように、エアコンは最も省エネ性に優れた暖房機器です。
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② 暖冷房費を節約する経済性

②の経済性だけを取り上げれば、灯油式の暖房や、寒冷地で用いられることが多い夜間電力を用いた蓄熱式電気暖房も該当するかもしれません。しかし、価格変動の大きい灯油に暖房を依存するリスクを2008年の石油価格の高騰で経験したばかりです。蓄熱式電気暖房は、安価な夜間電力を利用できるので電気代を抑えることができますが、CO2排出量が多いのが欠点ですので①の高断熱住宅の役割を考えるとお薦めすることはできません。そうなると、経済性の点でも、“エアコン”が一番となります。
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③ 温度むらの少ない快適性

③の温度むらの少ない快適性を生かせるのは“床暖房”です。床暖房の方式にはガス式、灯油式、電気(ヒーター、又はヒートポンプ式)がありますが、「省エネ性」で紹介した実験結果のように、エアコンに比べれば1次エネルギー消費量が多くなり、省エネ性はエアコンに劣ります。快適性を優先させる場合には、省エネ性能の高い方式の床暖房を選択されることをお薦めします。ただし、高断熱住宅自体が温度むらの少ない環境を形成しますので、ファンヒーターより温度むらが少なく(「温度分布」参照)、しかも立上りが早い(「立上りの早さ」参照)“エアコン”も高断熱住宅に適した暖房です。
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④ 温度ショックが少ない健康性

④の温度ショック(ヒートショック)の低減を実現する温度のバリアフリーは、家全体を暖房する中央方式(セントラル方式)の暖房が効果的です。しかし、本格的な中央方式の暖房でなくても可能です。現在の住宅には家全体を換気する常時換気システムの設置が法律で定められており、通常、廊下や洗面所、トイレ等で排気を行っています。給気は居室で行われますので、居室から廊下や洗面、トイレ等のその他の空間に空気が流れていますので、居室を暖房することでその他の空間も間接的に暖房されることになります。高断熱住宅だと熱の損失が少ないので、その他の空間の温度も低断熱の住宅に比べて高くなります。
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⑤ 結露対策による耐久性

⑤の結露については、開放式のファンヒーター、ストーブ以外が選択肢になります。開放式とは、ガスや灯油を室内の空気で燃焼させ、燃焼ガスも室内に排気する方式です。したがって、燃焼に必要な空気を室内に取り入れる為に換気が必要となりますが、高い気密性能を有する高断熱住宅では頻繁に多量の換気※1 を行う事が必要になるばかりでなく、不完全燃焼による重大な事故の発生の可能性があります。また開放式は多量の水蒸気を室内に排出しますので、防露性能の高い高断熱住宅では逃げ場を失った水蒸気が室内に多量に滞留し、室内の衣類や調度を湿らせたり、カビや結露の原因になります。開放式の暖房機器の使用は、絶対にお止め下さい。
※1 窓明けや、台所のレンジフードの使用などによる多風量での換気が必要です。常時換気システムによる少風量での換気は、燃焼による必要空気を供給することができません。 ▲表へ戻る

総合的には、高断熱住宅に最適な暖房としては、“エアコン”をお薦めします。

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