JFEロックファイバー株式会社

第8回 取り合い部の設計、施工 ここが大事“取り合い部”

第8回 取り合い部の設計、施工 ここが大事“取り合い部”

“取り合い部”。聞きなれない言葉ですが、「第2回 断熱設計の基本:断熱施工の奥深さ」で解説しました断熱施工で最も重要な「断熱層の連続性」を得るために注意が必要な箇所です。どんなに性能の良い断熱材を使っても、どんなに厚い断熱材を使っても、“取り合い部”を正しく施工しないと、隙間風の侵入や結露の原因となります。

設計・施工に関わる部分なので、設計士や職人さんに任せきりになりがちなところですが、一度、ご自身の目で確認されてはいかがでしょうか。家は金額的にも大きな買い物です。長期間住むためには、安全性、快適性が不可欠です。施工状態をご自身の目で確認し、納得できる家造りに取り組まれることをお薦めします。

1. 取り合い部の断熱

断熱材を決定すると、次は施工です。断熱材の保管や取扱、加工にも気を遣いますが、断熱性の確保のためには、断熱材を必要な部分に隙間なく施工することが基本です。その他にも、壁と床、壁と天井など、断熱材と断熱材、断熱材と構造部材がぶつかるところの施工がどうなるか気になります。断熱材どうしや断熱材と構造部材の間に隙間があると、断熱層に外気や室内空気が侵入したり、他の部位から漏れてきた空気が入ったりします(第2回P1図2参照)。断熱材や防湿層がきちんと連続して施工されていないと、せっかく選んだ断熱材が性能を発揮できないばかりか、結露(第6回P5参照)や内装材の汚損といった問題も発生する危険があります。

住宅を長持ちさせるために、省エネルギーを実践するために、何よりも健康で安全な暮らしを実現するために、適切な施工が望まれます。

今回は、木造軸組構法の取り合い部をテーマにします。

1-1 木造軸組構法の断熱上の問題点

木造軸組構法の充填断熱工法は、断熱技術上、図1のような問題点があります。
気流経路となりがちな構造体内部に断熱材を充填するため、壁内気流によって断熱性が十分に得にくいことや、図1の○印部分で断熱層や防湿層が切断されがちなため、断熱性能の低下だけでなく、防露性の確保や躯体の気密性を上げることが難しくなるのです。断熱や防露の性能を確保するための外壁や間仕切り壁の上下端部における気流止め材の設置や、防湿層の連続性をどのように実際の現場で実現するかが問題となります。もちろん各部位の層構成を建物全体で連続させることも必要です。第2回の図2に間仕切り壁と床、間仕切り壁と天井の取り合い部の断熱施工の悪い例、良い例を掲載していますので参照してください。

図 1 木造軸組構法の断熱上の問題点

図 1 木造軸組構法の断熱上の問題点

1-2 壁体内の空気の流れを止める“気流止め”

図 2 木造軸組構法における無断熱の場合の空気の流れ(例)
図 2 木造軸組構法における無断熱の場合の空気の流れ(例)

図 3 枠組壁工法:床下、外壁内、小屋裏の各空間が分離している例
図 3 枠組壁工法:床下、外壁内、小屋裏の各空間が分離している例

図 4 間仕切り壁と床、間仕切り壁と天井の断熱施工
図 4 間仕切り壁と床、間仕切り壁と天井の断熱施工
木造軸組構法の外壁及び間仕切り壁上下端部では、通常、何の対策も施さないと壁の内部の空間が床下と小屋裏等の空間がつながっています(図2参照)。このままでは、外気が床下から壁内に侵入し、小屋裏に抜け出るという空気の流れが形成されます。この空気の流れは暖房すると温まり、冷たい外気との温度差で更に流れを成長させます(この現象を‘煙突効果’といいます)。この気流は断熱施工された状態でも生じ、壁体の断熱性能を低下させ、また天井ふところ、小屋裏空間の通気量を想定以上に増大させます。これが、住宅の断熱性能を低下させる大きな原因となり、せっかく良い断熱材を使っても、その効果が低減してしまいます。

そこで、床下〜壁内、壁内〜小屋裏の間の空気の移動を防ぐために施す措置を“気流止め”といい、壁と天井、壁と床の取り合いの部分で行います。
 
気流止めは、従来は被覆材なしの繊維系断熱材を詰め込むなどの方法が行われていましたが、これでは不完全なので、気密材で行うことが望まれます(図4及び第2回p1図3参照)。
 
また、全部位を外張断熱した場合には、外壁及び間仕切り壁の気流止めを設置する必要はありません。それは、小屋裏や床下の空間が熱的境界の内側にあるからです。しかし、外壁など一つの部位に外張断熱工法を適用した場合には、気流止めが必要となる場合もあります。たとえば、壁を外張断熱にした場合で、天井や床が充填断熱の場合には、間仕切壁の上下の空間がつながりますので気流止めが必要です。(第6回参照
 
枠組壁工法は、床下、外壁内、小屋裏が分離しており、床下から外壁内を介して小屋裏への経路が存在しないため、充填断熱にした場合でも、気流止めに関しての特別な対応は不要です(図3)。
木造軸組構法における気流止めの方法例を、次頁の表1及び図5〜8に示します。)