
第7回 開口部の断熱:窓は★★★でチェック
(3) 窓の付属品
建具やガラスだけでなく、窓に付属品をつけることも効果的です。付属品とは窓の屋外側や屋内側に設置し、窓から入ろうとする日射を遮ったり、室内の断熱効果を高めたりするためのもので、カーテンやブラインド、雨戸などをさします。必要に応じて可動性のあるものなどを選べば、季節や時間、天候などの変化、眺望などの生活上の要望に対して柔軟に対応できます。
① 夏の仕様
夏の窓に必要な付属品とはどのようなものでしょうか。夏は日射熱によって室温が上昇します。この建物内に侵入しようとする太陽熱をうまく遮ることで、冷房の消費エネルギーを削減しつつ、快適性を向上させることができます。表3に夏に必要な付属品の種類と特性を示します。
【表 3 日射遮蔽部材の種類と特性】
外付け | スクリーン | 開閉により日射と視線制御が可能であるが、風に対して弱い |
すだれ | 収納性・耐久性は劣るが安い | |
オーニング | 開口部とは直接対面しないので眺望性がよい | |
ブラインドシャッター | ブラインドとシャッターの機能を併せもつ高機能部材 | |
ブラインド | 日射と視線制御の自由度が高いが風に対して弱い | |
ルーバー | 羽根は回転するが上下に稼働しない固定型 | |
内付け | レースカーテン | 日射と視線制御が可能、目の粗さや色によって日射遮蔽の効果は変わる |
ロールスクリーン | 日射と視線制御が可能、色によって日射遮蔽の効果は変わる | |
紙障子 | 日射と視線制御が可能、色によって日射遮蔽の効果は変わる | |
ブラインド | 日射と視線制御の自由度が高く、色によって日射遮蔽の効果は変わる |
図11は日射遮蔽部材の有無や位置の違いによる室内の温度を表しています。日射遮蔽部材には外付け部材と内付け部材があり、内付けの場合は、窓を透過して日射遮蔽部材の表面に当たる熱のほとんどが室内に放熱されてしまいます。一方、外付けの場合は、屋外で日射熱を遮蔽し大気に放熱しますので、内付けに比べて日射遮蔽効果が高まります。また、窓から遮蔽物までの距離が遠いほど、遮蔽効果が高くなります。

図 11 日射遮蔽部材の位置による効果の違い
内付け部材は外付け部材ほどの効果は期待できないにしても、全く効果がないわけではないのです。表4はガラスと付属品を組合せたときの日射侵入率を表したものです。ガラス自体の遮熱性能を高めること、付属品(日射遮蔽物)の性能の向上が、そのまま組合せた時の「日射遮蔽性能」の向上につながります。
【表 4 ガラス単体並びにガラスと付属部材と組合せたときの日射侵入率η値(IV地域)】
方位 | ガラスの仕様 | 空気 層厚 (mm) |
ガラス部分の日射侵入率η値 | ||||
日射遮蔽物の種類 | |||||||
なし | レース カーテン |
内付 ブラインド |
紙障子 | 外付 ブラインド |
|||
真北±30度 | 普通複層ガラス | 6 | 0.79 | 0.52 | 0.44 | 0.37 | 0.17 |
低放射複層ガラス | 6 | 0.62 | 0.47 | 0.42 | 0.37 | 0.15 | |
遮熱低放射複層ガラス | 6 | 0.43 | 0.33 | 0.30 | 0.26 | 0.11 | |
遮熱複層ガラス (熱線吸収複層ガラス) |
6 | 0.57 | 0.41 | 0.36 | 0.31 | 0.13 | |
上記以外 | 普通複層ガラス | 6 | 0.79 | 0.52 | 0.44 | 0.37 | 0.17 |
低放射複層ガラス | 6 | 0.62 | 0.47 | 0.42 | 0.37 | 0.15 | |
遮熱複層ガラス (熱線吸収複層ガラス) |
6 | 0.57 | 0.41 | 0.36 | 0.31 | 0.13 | |
遮熱低放射複層ガラス | 6 | 0.43 | 0.33 | 0.30 | 0.26 | 0.11 | |
遮熱複層ガラス (熱線反射複層ガラス) |
6 | 0.39 | 0.31 | 0.28 | 0.25 | 0.10 |
出典:住宅の省エネルギー基準の解説(財団法人建築環境・省エネルギー機構)
② 冬の仕様
冬は夏とは反対に、室内を暖かくするために窓からの日射熱を有効に利用することが重用です。日中は日射を取り入れ、夜間は部屋の暖かさを逃がさないための付属品が必要です。日射がある日中はカーテンを開けて日射を室内に取り込み、寒い時にはカーテンや雨戸を閉めることはごく普通の行為ですが、最も効果的な寒さ対策と言えます。また、付属品の設置位置は夏とは逆で、カーテンや障子など内付けの付属品が効果的です。(表 5)
図12は、窓の付属品を加味した場合の窓の熱貫流率を比較したものです。値が小さいほど断熱効果が高くなります。アルミサッシの単板ガラスでも、カーテンや障子を閉めれば複層ガラス並の断熱効果が期待できます。ただし、窓の温度が下がりますので窓での結露は防止できません。断熱性能の高い建具とガラスを採用し、それに加えて障子やカーテンを併用することをお勧めします。
【表 5 窓の付属品の熱抵抗値】
付属品の種類等 | 熱抵抗値※1 (m²・K)/W |
|
外付け | 外付けのシャッターまたは雨戸 | 0.08 |
内付け | 障子等 | 0.18 |
カーテン(上下端が共に密閉されているもの) | 0.10 | |
カーテン(上下端のどちらかが密閉されているもの) | 0.08 |
上端密閉のカーテン:カーテンボックス又は天井に取り付けられたカーテンレールに取り付けられたカーテン
下端密閉のカーテン:裾を床まで垂らしたカーテン
※1:熱抵抗値は、値が大きいほど断熱性能が高いことを示します
出典:住宅の省エネルギー基準の解説(財団法人建築環境・省エネルギー機構)

図 12 付属品の熱抵抗を加味した窓の熱貫流率
(4) ひさし、軒等
ひさしや軒は、住宅が密集する都市型住宅では邪魔者扱いされますが、外壁や窓の汚れを防ぎ、夏の強烈な日射を遮る効果があります。日射遮蔽効果は太陽高度が高い夏だけに有効で、太陽高度が低い冬は日射を遮らず室内に日射を取り入れることが出来ます(図 13)。
ただし、この効果は太陽高度が高くなる南面付近でのみ有効で、太陽高度が低い東西面では効果が得られません。東西面の窓では、ガラスやブラインド、すだれ等で日射遮蔽を工夫して下さい。

図 13 ひさし等による日射遮蔽効果のイメージ

さて、ひさしや軒の出をどの程度取れば良いのでしょうか? ひさしや軒の出寸法は、窓下端とひさし等の下端の高低差の1/3以上の長さにすればよいと言われています(図 14)。